なぜ手放せないか

フタが前面からスーツケースのように180度開く。上からしか開かない巾着式のバックパックは、底に沈めた靴下を取り出すために全部ひっくり返す羽目になる。この一台は、床に寝かせてパカッと開けば、全持ち物が一望できる。荷造りという行為が、苦行から儀式に変わった。

蘊蓄をひとつ

多くの航空会社の機内持ち込み上限は、おおむね三辺合計115cm前後。この数字を一度でも超えると、預け荷物のターンテーブルの前で人生の貴重な二十分を失うことになる。「これ以上は持たない」という物理的な上限を自分に課すこと——それが身軽さの正体だ。

旅での相棒ぶり

機内に持ち込み、空港から地下鉄へ、石畳の旧市街へ。キャスターを鳴らさず、段差に悪態をつかず、どこへでも背負って入っていける。荷物を預けない旅は、いつでも引き返せる旅でもある。