なぜ手放せないか

安いアイマスクは、瞼を押さえつける。眼球の上で布が触れ、瞬きのたびに気になって、かえって眠れない。これは目元にドーム状の空間があり、瞼がまったく触れない。暗いのに、目の前は広い。この一点だけで、機内泊の質が変わった。

蘊蓄をひとつ

人間の睡眠を司るメラトニンは、わずかな光でも分泌が止まる。まぶたを透ける朝陽、機内の非常灯、ホテルのカーテンの隙間から漏れる一筋——脳はそれらを律儀に「朝」と判定してしまう。完全な遮光とは、つまり脳を一杯食わせる技術である。

旅での相棒ぶり

夜行バス、長距離フライト、安宿の薄いカーテン。世界中の「眠れない夜」を、これ一枚で自分の寝室に変えてきた。荷物の中で最も軽く、最も効く道具かもしれない。