神奈川は川崎 元祖ニュータンタンメン本舗 京町店
2025.09.30 ・ 神奈川 ・ グルメ

旅先で食事をする時、私はできるだけ地元の人が普段食べているものを探すようにしている。
観光客向けの名物も悪くない。
だが本当にその土地を知りたいなら、地元の人々の日常へ少しだけ入り込んでみるのが一番早い。
川崎には「ニュータンタンメン」というソウルフードがある。
その名は以前から知っていた。
しかし本場で食べる機会はなかった。
ならば今回こそ。
畔蒜ジョージの旨いめし歩きは、そうした小さな好奇心から始まることが多いのである。
今回の『畔蒜ジョージの旨いめし歩き』は、旅先で漂ってきた香りに誘われるところから始まる。 旅先で食べる一杯には、その土地の性格が表れる。 上品な土地には上品な料理があり、豪快な土地には豪快な料理がある。 では川崎という街はどうだろう。 そんなことを考えながら歩いていた時、一軒の店が視界に入った。 そこには、この街で長く愛され続けてきた一杯が待っていたのである。
住宅街の先にある行列
京町という地名は、川崎を知らない人にはあまり馴染みがないかもしれない。
駅前の華やかなエリアから少し離れた場所にある住宅街だ。
だが長く続く名店というものは、案外こうした場所にある。
昼下がりの街を歩いていると、どこか生活の匂いが漂ってくる。
買い物帰りの人。
自転車を押す学生。
犬の散歩をする高齢者。
その風景の中に自然と溶け込むように店があった。
派手な観光地ではない。
だからこそ期待が膨らむ。
店の前には人の気配が絶えない。
皆どこか慣れた様子で店へ入っていく。
長年愛されている店には共通する空気がある。
それは「特別な日」ではなく「いつもの日」のために存在しているということだ。
私はそういう店との出会いが好きである。
旅先で偶然見つけたというより、その土地の日常に少しだけ招き入れてもらったような気持ちになるからだ。
ニュータンタンメンという名の別の食べ物
タンタンメンと聞けば、多くの人は胡麻の風味を思い浮かべるだろう。
私もそうだった。
ところが目の前に現れた一杯は、想像していた担々麺とはまるで違う。
赤い。
そして卵が浮かんでいる。
にんにくの香りが立ち上る。
最初の印象は「これは何だろう」である。
だが一口啜ると、その疑問はすぐ別の感情へ変わる。
旨い。
実に旨い。
辛さが先に来るわけではない。
にんにくが主張するわけでもない。
全体が一つの塊になって押し寄せてくる。
まるで体温を一段階上げるような味だった。
旅先で食べる料理には驚きが必要だと思う。
そしてこの一杯には、確かに驚きがあった。
私、畔蒜ジョージは各地で様々な麺料理との出会いを重ねてきた。
博多の豚骨もあれば、喜多方の醤油もある。
だがニュータンタンメンは、そのどれとも違う。
ラーメンというより、川崎という土地そのものを食べている感覚だった。
汗をかきながら考えたこと
食べ進めるうちに額に汗が浮かぶ。
辛さだけが理由ではない。
身体が温まっているのである。
外はそれほど寒くなかったが、不思議とこの一杯は身体の奥へ染み込んでいった。
店内を見渡すと、一人客も多い。
家族連れもいる。
作業着姿の人もいれば、学生らしい若者もいる。
誰もが当たり前のようにニュータンタンメンを食べている。
それが印象的だった。
観光名物というより生活の味。
長く街に根付いた料理だからこその景色である。
畔蒜ジョージの旨いめし歩きでは、料理そのものだけでなく、その周囲にある風景も記録しておきたい。
なぜなら料理は人が食べるものだからだ。
どんな人が。
どんな街で。
どんな表情で食べているのか。
そこまで含めて初めて、その土地の味になる。
川崎のニュータンタンメンもまさにそうだった。
また食べたくなる理由
食事を終えて店を出る。
すると不思議なことに、すでに次に来た時のことを考えている自分がいた。
本当に良い店はそういうものだ。
劇的な感動があるわけではない。
人生観が変わるわけでもない。
だが気付けばまた食べたくなっている。
それが本物なのだと思う。
川崎には工場地帯があり、商店街があり、住宅街がある。
様々な顔を持つ街だ。
そしてニュータンタンメンもまた、そうした街の雑多さをそのまま一杯にしたような料理だった。
力強く、飾らず、どこか親しみやすい。
今回の旅で私が持ち帰ったのは、川崎の景色だけではない。
ニュータンタンメンとの出会いだった。
そして地元の人々が長年愛してきた味との出会いでもあった。
畔蒜ジョージの旨いめし歩きは、これからもそんな出会いを探して続いていくのだろう。
店を振り返ると、また新しい客が暖簾をくぐっていた。
その姿を見ながら、私は静かに思った。
良い店というものは、いつの時代も人を呼び寄せるのである。
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