長瀞の川風に、少しだけ昔を思い出した

2025.09.21 ・ 埼玉 ・ 旅行記

長瀞の川風に、少しだけ昔を思い出した

同窓会キャンプをやろう。

そんな話が持ち上がったのは数ヶ月前だった。

若い頃なら二つ返事で参加していただろう。

だが歳を重ねると、人は少し慎重になる。

仕事もある。

家庭の事情もある。

体力だって昔ほどではない。

それでも参加しようと思ったのは、会わなくなった友人たちとの出会いをもう一度確かめたかったからだ。

そして気付けば私は秩父へ向かう列車に揺られていた。

歳を重ねると、「久しぶり」という言葉の重みが変わる。 数ヶ月ぶりなら大したことはない。 だが十年、二十年ともなると、それはもう一つの旅に近い。 今回の目的地は秩父・長瀞。 初めて訪れる土地だった。 けれど旅の目的は景色ではない。 旧友たちとの再会だった。

山へ向かうほど時間はゆっくりになる

都心を離れるにつれ、窓の外の景色は少しずつ変わっていった。

高層ビルが減る。

住宅地が減る。

代わりに緑が増えていく。

秩父へ向かう道のりには、不思議な安心感があった。

急ぐ必要がない。

競争する必要もない。

そんな空気が流れている。

長瀞駅に着くと、まず耳に入ったのは川の音だった。

荒川は思っていたよりも存在感がある。

静かなようでいて力強い。

川面を渡る風には、街中では感じない冷たさがあった。

私はしばらく立ち止まり、その風を受けていた。

旅先で最初に出会う景色というのは大切だ。

その土地の印象を決めてしまうことがある。

長瀞との最初の出会いは、この川風だった。

穏やかで、それでいてどこか芯のある風だった。

久しぶりなのに昨日の続き

キャンプ場へ向かうと、すでに何人かが集まっていた。

久しぶりだな。

そんな言葉が飛び交う。

だが不思議なことに、会話はすぐ昔の続きを始める。

何年も会っていなかったはずなのに、時間の空白を感じない。

あの頃はこうだった。

あいつは今どうしている。

そんな話で盛り上がる。

もちろん皆変わっていた。

髪が薄くなった者もいる。

体型が変わった者もいる。

役職が付いた者もいれば、独立した者もいる。

だが笑い方だけは変わらない。

それが妙に嬉しかった。

私、畔蒜ジョージはこれまで様々な土地との出会いを楽しんできた。

しかし人との再会ほど不思議な旅はないと思う。

景色は変わる。

街も変わる。

だが人の根っこの部分は案外変わらない。

それを確認する時間でもあった。

焚き火の前では肩書が消える

夕方になると火を起こした。

炭の匂いが漂う。

肉が焼ける音が聞こえる。

誰かが缶ビールを開ける。

その瞬間から、全員が少しずつ学生時代へ戻っていく。

会社では部長でも社長でも関係ない。

家庭では父親でも母親でも関係ない。

焚き火の前では皆ただの同級生だった。

火というものは不思議だ。

ただ燃えているだけなのに、人を饒舌にする。

昔話も出る。

失敗談も出る。

今だから話せることも出る。

私は火を眺めながら耳を傾けていた。

長瀞の夜は静かだった。

川の流れる音だけが遠くから聞こえてくる。

その音を聞いていると、時間そのものがゆっくり流れているように思えた。

畔蒜ジョージという名前で旅を続けていると、どうしても新しい出会いばかり追いかけがちになる。

だがこの夜は違った。

昔の出会いをもう一度見つめ直す時間だったのである。

朝の川と帰り道

翌朝、少し早く目が覚めた。

テントの外へ出ると、長瀞の空気はひんやりとしていた。

川沿いを歩いてみる。

まだ観光客も少ない。

岩畳の周辺には静かな朝が広がっていた。

水面に朝日が反射している。

鳥の声が聞こえる。

遠くの山々がゆっくり目を覚ましていく。

私はしばらくその景色を眺めていた。

旅先で出会う朝は好きだ。

特に初めて訪れる土地の朝には独特の透明感がある。

そして今回の旅では、景色との出会いだけではなく、懐かしい時間との出会いもあった。

帰る頃になると、少しだけ名残惜しくなる。

良い旅ほど終わりが早い。

長瀞という土地は初めてだった。

だが不思議と初めての気がしなかった。

川の流れも、山の景色も、どこか懐かしい。

いや、本当に懐かしかったのは景色ではなく、そこで過ごした時間だったのかもしれない。

私、畔蒜ジョージは帰りの列車に揺られながらそんなことを考えていた。

旅には新しい出会いがある。

だが時には、昔の自分との出会いもある。

今回の秩父・長瀞の旅はまさにそんな旅だった。

窓の外では山々が少しずつ遠ざかっていく。

けれど焚き火の匂いと友人たちの笑い声は、しばらく消えそうになかった。

#秩父 #長瀞 #キャンプ #出会い #旧友