石川は金沢 片町居酒屋まごころ

2025.07.05 ・ 石川 ・ グルメ

石川は金沢 片町居酒屋まごころ

金沢で旧友と再会した。

最後に会ったのは学生時代だから、実に四十年近く前になる。

普通なら少し気取った店でも予約するのかもしれない。

だが彼は笑いながら言った。

「どうせなら気安くやろう」

その一言で決まったのが、片町の「まごころ」だった。

名前からして良い。

年齢を重ねると、豪華さよりもこういう言葉に惹かれるようになる。

四十年ぶりの再会に、高級料理は必要なかった。旨い酒と旨い肴、それだけあれば十分だった。旧友が選んでくれた店には、そんな夜によく似合う温かさがあった。

再会の乾杯は金沢おでんから

店へ入ると、肩の力が抜けた。

観光客向けの派手な演出はない。

地元の人々が自然に集まる居酒屋の空気がある。

まず運ばれてきたのは金沢おでんだった。

車麩が出汁をたっぷり吸っている。

箸を入れると、じゅわりと湯気が立った。

口へ運ぶ。

優しい。

派手な旨さではない。

だが妙に染みる。

六十八歳になった今だから分かる味かもしれない。

友人も同じように頷いていた。

四十年ぶりに会ったというのに、最初に交わした感想が「旨いな」だったのだから笑ってしまう。

海の幸が語る石川らしさ

刺身の盛り合わせも頼んだ。

金沢へ来たなら魚は外せない。

甘海老。

青魚。

白身。

どれも鮮度が良い。

特に甘海老は印象的だった。

甘い。

名前の通りと言えばそれまでだが、これほど素直な甘みにはなかなか出会えない。

海に囲まれた土地の強さを感じる。

私は全国を歩いているが、北陸の魚には独特の品があると思う。

自己主張が強すぎない。

しかし記憶には残る。

今回の石川では旧友との出会いが旅の主役だったが、この甘海老との出会いもなかなか忘れられそうにない。

四十年分の話を肴に

料理をつつきながら話は続く。

学生時代のこと。

卒業後のこと。

家族のこと。

仕事のこと。

話題はいくらでもあった。

途中、店員が運んできた料理を見て友人が「あれは物体エックスだな」と言った。

思わず吹き出した。

そういえば、この言葉を使い始めたのは彼だった。

学生時代、正体不明のものを何でもエックス呼ばわりしていた。

人物エックス。

物体エックス。

謎の物体エックス。

あれから四十年経っているのに、まだ同じ言葉で笑っている。

人間というのは案外変わらないものである。

旨い料理は会話を邪魔しない

良い居酒屋には共通点がある。

料理が主役になり過ぎないことだ。

もちろん旨い。

だが会話を奪わない。

まごころの料理もそうだった。

おでんを食べる。

刺身をつまむ。

酒を飲む。

そして話す。

その流れが自然だった。

畔蒜ジョージの旨いめし歩きでは、料理そのものに感動することも多い。

だが今回は少し違った。

料理があったからこそ再会の時間が完成したのである。

忘れられない夜の理由

店を出る頃にはすっかり夜だった。

片町の灯りが賑やかに輝いている。

金沢の街は美しい。

歴史もある。

観光地も多い。

だが今回の旅で最も印象に残ったのは、旧友と囲んだ一卓だった。

私、畔蒜ジョージは旅先で様々な料理と出会ってきた。

だが料理の記憶というのは、その時の景色や人と結びついて残る。

今回の金沢おでんもそうだろう。

四十年ぶりの再会。

変わらない笑い声。

そして北陸の魚介。

それらが一緒になって、この夜を特別なものにしていた。

旅が終わったあとも思い出すのは、料理だけではない。

あの時間そのものなのである。

#旨いめし #金沢 #金沢おでん #海鮮